クロモジについて
日本のクロモジ
クロモジはクスノキ科の落葉低木で、日本固有種の香木です。北海道南端から九州まで広く分布してます。 クロモジは一般に次の2種3変種に分類されます。
1. クロモジ(本州、四国、九州)、オオバクロモジ(北海道、本州)、ヒメクロモジ(本州ー東海道、近畿地方、四国、九州) 2. ケクロモジ(本州ー紀伊地方、四国、九州)、ウスゲクロモジ (本州ー関東以西、四国、九州)
しかし、これらは形態的に類似してるばかりでなく、分布する高さおよび地域によって葉の形態が異なる場合も認められ、 少数の専門家以外は同定が困難であるため、すべてをクロモジとしているところが多いと言われてます。
また、精油成分からみると、クロモジ、オオバクロモジ、ヒメクロモジ、ケクロモジの精油成分は非常に似ているが、 ウスゲクロモジは他のクロモジと著しく異なるようです。
さらに、精油成分から進化の面をみると、成分の構造の複雑なものは簡単なものより進化の程度が高いと考えられていることから、 リナロールを多く含むオオバクロモジが母種だと考えられてます。
そして、1.8-シネオールを多く含む四国、九州産のクロモジを生じ、 他方、リモネンが酸化した型のカルボンを多量に含む近畿、中国地方のクロモジを生じたと考えられてます。 ウスゲクロモジはクロモジの中では一番進化の度が高いと推定されてます。
参考文献
林七雄、古前恒「くろもじの科学生態学」香料 No.115 昭和51年(1976年)6月
林七雄、古前恒「本邦産クスノキ科の精油」香料 No.121 昭和53年(1978年)4月
小山博滋「クロモジ郡の分類と分布」植物分類・地理 38、161-175、1987-09-25
林七雄、古前恒「くろもじの科学生態学」香料 No.115 昭和51年(1976年)6月
林七雄、古前恒「本邦産クスノキ科の精油」香料 No.121 昭和53年(1978年)4月
小山博滋「クロモジ郡の分類と分布」植物分類・地理 38、161-175、1987-09-25
青森のクロモジ
青森県には葉の大きいオオバクロモジが多く自生してます。そして、精油の主成分はリナロールであることが特徴です。
林道や作業道に沿って繁茂し、針葉樹よりも広葉樹に混在して群生しています。また、場所によっては低木層の優占種になってます。
ところで、クスノキ科の分布の中心は東南アジアやアマゾン流域の熱帯林です(30属2500種)。日本には20数種自生してます。そのうち青森県に自生しているのは、クロモジとアブラチャンです。このほか、タブノキが半自生しているといわれてます。
クスノキ科は暖地の植物であるので、北に進出してきたと思ってました。オオバクロモジが母種であるということは意外なことだと思ってます。
参考文献
斉藤信夫「青森県津軽半島のミズナラ林の種組成と分布傾向」植生学会誌15、107-115、1998
石川茂雄「ふるさとの植物」津軽書房
斉藤信夫「青森県津軽半島のミズナラ林の種組成と分布傾向」植生学会誌15、107-115、1998
石川茂雄「ふるさとの植物」津軽書房
クロモジ精油
クロモジ精油は、枝葉を水蒸気蒸留して得られます。戦前には伊豆地方で採油され、石鹸香料や調合香料の原料の他、輸出もされていたそうです。
クロモジは北海道から九州まで広く分布してます。しかし、精油成分の組成比は地方で異なるため、香りも地方で異なります。
青森県には葉の大きいオオバクロモジが多く自生しています。主成分はリナロールといってローズウッドと同じです。
青森県産オオバクロモジの物理特性と成分分析(2010年産 採取地:青森市近郊) 物理特性
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成分分析
日本食品分析センター調べ
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クロモジ蒸留水
〇クロモジ蒸留水は、枝葉を水蒸気蒸留すると、精油とともに得られます。芳香蒸留水、ハーブウォーター、ハイドロゾルとも言われ、精油のエッセンスを含んだ水溶液です。
主な成分と含有量は次の通りです。
〇クロモジ 精油成分と比較すると次のようになります。
「蒸留水と精油の比較」のグラフ
- 〇使用例
- ◆入浴剤として、30~50ml入れます。
- ◆うがいのとき、うがい水に数滴入れます。
- ◆ルームスプレーとして。
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